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宮城仙台の弁護士にご相談を  「青葉法律事務所」WEBLOG

ベテランから若手まで弁護士5人で頑張っています。一番町の弁護士事務所 「青葉法律事務所」のブログです。法律相談ご予約は022-223-5590までお気軽にお電話下さい。【仙台 弁護士 相談】

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「償い」の線引き

(平成24年11月発行 事務所報「あおば」。仙台市の弁護士事務所「青葉法律事務所」弁護士小野寺宏一執筆記事です)


 「交通事故に遭ったため入院することになり入院生活のストレスでたばこの量が増え、しまいには肺がんを発症してしまった」という場合、事故の加害者はどこまで償いをすべきでしょうか。民法上の損害論では、怪我の治療費や怪我の治療期間の休業損害は請求できても、増えてしまったたばこ代や肺がんを発症したことによる損害までは請求できないと考えられています。

 被害者からすれば、「事故にさえ遭わなければ余計なたばこなんか吸わなかったし、肺がんにもならなかった」と思うのはもっともですが、法的には「因果関係がない」ということとされ、裁判所は損害として認めてくれません。

 また、事故によって被害者が損害を受けていることが明らかでも(因果関係があることも明らかな場合でも)、その「損害」を金銭的にどのように算定するかについて、頭を悩ませることがしばしばあります。

 このたびの原発事故に伴う相談を受けるたびに、このような民法上の「損害」論について改めて考えさせられるようになりました。

 原発事故による被害は、今まで誰も経験したことがない被害です。周辺地域の住民の方は、長年住み慣れた故郷を離れ、生業を失い、自分の生活基盤のみならず、地域のコミュニティーまでをも失うことになりました。また、放射性物質による直接的な被害がない地域でも、風評被害などが生じています。

 こういった多岐にわたる被害についての損害論は、法律家にとっても未経験の領域です。しかし、「未知のことなのでゆっくりじっくり考える」ということも許されません。現在も被害が継続して発生しており、私が所属している原発弁護団でも深刻な被害実態が次々と報告されています。

 原発被害の被害回復を求める方法としては、
1.電力会社に直接請求する方法
2.政府が作った仲裁機関に申立をする方法
3.裁判をする方法

 ・・・があります。1や2の方法は、裁判と比べて迅速に被害回復ができる利点がありますが、電力会社の同意が必要になるので、賠償額は低額になってしう傾向があります。


 「迅速に、かつ適切に」被害回復をするために、どの手続で賠償を求めるのが適切かを頭を悩ませながら、今は「走りながら考えている」状況です。私たちにできることは、被害の実態を把握し、法的な言葉に変換して相手(電力会社や裁判所)に届けることです。


 被害の実態を知るほどに、他方で電力会社からの反論を目の当たりにするたびに、従来の損害論をそのまま当てはめることが適切なのか、そもそも「償う」というのはどういうことなのか考えさせられます。


(執筆当時の条文、法律状況を前提としています)。